私たちの哲学

目次

はじまりと気づき

HUB’sの原点は、農業(農)と福祉(福)をつなぐ「農福連携」です。障がいのある方の就労機会を生み出し、農家の現場とつながりながら、役割を持って働ける場を増やしてきました。活動を重ねるうちに見えてきたのは、担い手不足という表層だけでなく、子どもたちが農に触れる機会の減少や、「農業はしんどい・もうからない」という印象が世代を越えて受け継がれているという、より深い社会の課題でした。

だからこそ私たちは、

農を“体験”として取り戻すこと—

楽しさも大変さも含めて身体で知ること—

そして福祉を“特定の人の支援”に限定せず、

—地域に生きるすべての人の暮らしと役割へと広げて捉えること—

に軸足を置いてきました。貸し農園や体験農園、マルシェを通じて親子や地域が交わり、都市と農村が往来する。そこから「働くこと」の意味も、お金のためだけでなく生きがいと幸せのためへとつながると信じています。

HUB'sの哲学「はじまりと気づき」

活動の根幹にある、2つの気づき

【二つの気づき】私たちが直面した、見過ごされがちな社会課題

私たちが大切にしてきた気づきは二つ。

人と人、人と社会を結び、新たな可能性をひらくこと。

そのつながりから新しい価値が生まれ、地域や社会を豊かにすること。

この学びをもとに、長年の実践を通して二つの根本課題に向き合う必要があると確信しました。

HUB'sの哲学「二つの気づき」
1)働くことの価値観の崩壊

何が起きているか働くことが「お金のため」という手段に片寄り、貢献や役割から得られる本質的な喜びが見えにくくなっています。

なぜ問題か報酬だけを軸にすると多幸感が得にくく、低賃金や単調さを理由に「不幸せ」が増幅。役割の実感や感謝される体験が失われ、働くこと自体が負担になります。

私たちの考え役割・必要とされる実感・「ありがとう」が生きがいを生み、その結果として経済がついてくる。働くことを生きがいと幸せのために再定義することが必要です。

2)地域社会の断絶

何が起きているか子どもたちが農に触れる機会を失い、親世代の「農業はしんどい・もうからない」というイメージが継承。地域への愛着が薄れ、担い手不足が深刻化しています。

なぜ問題か人と人、人と自然の距離が広がると、地域の誇りや共助が弱まり、人口流出・産業衰退・景観や文化の喪失へと連鎖します。

私たちの考え幼い頃からの本物の体験(楽しい/大変の両面)と、都市と農村の交流がカギです。身土不二(しんどふじ)=「人間の身体と土地の恵みは切り離せない」の感覚を取り戻し、地域を“自分ごと化”する土壌をつくります。

HUB’sの活動を支える3つの信念

気づきから得た方向を日々の実践に落とし込むために、HUB’sは3つの信念を掲げます。

これは、活動の判断基準であり、関わるすべての人に共有したい合言葉です。

1)「はたらく幸せ」を創り、役割と誇りへとひらく

役割や誇りを持ってはたらくことを、生きがいに変えていく

私たちは、誰もが自分の役割に自信と誇りを持ち、生き生きと働ける社会を目指しています。

障がい者支援や農福連携の活動は、単なる労働力の提供ではありません。

働くことで得られる「ありがとう」の言葉や成長の喜び、地域の一員としての役割を通して、すべての人が生きがいを実感できる環境をつくります。

HUB'sの哲学「3つの信念」「「はたらく幸せ」を創り、役割と誇りへとひらく」

2)「地域」を、誰もが暮らしやすい場へと耕す

親子や世代、都市と農村を結び、愛着ある地域を育てる

私たちは、地域に根ざした活動を通じて、親子、地域住民、都市と農村をつなぎます。

HUB’sの多様な活動は、世代間の交流や地域コミュニティの活性化を促し、誰もが安心して暮らせる温かい地域づくりに貢献します。

地域の農産物や風景に触れる体験を通して、地域への愛着や誇りを育み、次世代につなげることも私たちの重要な使命です。

HUB'sの哲学「3つの信念」「「地域」を、誰もが暮らしやすい場へと耕す」

3)「社会」の課題を、次世代に持続可能な価値としてつなぐ

企業や行政、市民を結ぶハブとして、持続可能な価値を創出する

私たちは、特定の分野に留まらず、地域、行政、企業、人々をつなぐハブとして機能します。

孤立しがちな「点」と「点」を結び、地域の社会資源や人々の「やってみたい」という意欲を、新たな価値へと転換します。

社会の課題を自分ごととして捉え、解決に向けて行動する人を育てることで、持続可能な地域社会を次世代へとつなぐことを目指します。

「社会」の課題を、次世代に持続可能な価値としてつなぐ

HUB’sの4つの活動

3つの信念を現場で形にする具体の器が、HUB’sの「4つの活動」です。

二つの気づきをエンジンに、信念を羅針盤にして、日々のプロジェクトを動かしていきます。

1)はたらく幸せを創る活動

役割を実感できる仕事の場と、成長が見える学びの機会をつくります

私たちは、働くことを通して、一人ひとりが持つ可能性を信じ、それを単なる義務ではなく、自己実現のための喜びへと変えていくことを目指しています。既存の枠組みにとらわれず、人々の多様な才能や特性が最大限に活かされる場を創造します。このプロセスを通じて、誰もが役割に自信と誇りを持ち、自らの人生を豊かにできる社会を築いていくこと。働くことの真の価値を再定義し、それを社会全体に広めることが、私たちの使命です。

はたらく幸せを創る活動

2)地域と未来をはぐくむ活動

親子・世代・都市と農村を結び、地域の愛着と誇りを次世代へつなぎます

私たちは、地域に開かれた活動を通して、単なる「住む場所」としてではなく、人々が「ともに未来を創造していく場所」へと変えていくことを目指しています。農を通じた交流を起点に、世代や立場を超えた人々の温かい繋がりを育むことで、次世代が「住み続けたい」と心から思える魅力的なコミュニティを形成します。農地の保全や景観の維持といった活動は、私たちが守るべき地域の財産であり、それらを次世代に誇りをもって引き継ぐこと。それこそが、私たちのビジョンです。

地域と未来をはぐくむ活動

3)社会の価値を引き出す活動

見過ごされがちな課題に光を当て、新しい価値を創造します。

私たちは、見過ごされがちな資源を活かし、社会に存在する様々な課題や矛盾に対し、新しい視点と創造力で解決策を生み出す挑戦をしています。人々の声に耳を傾け、そこに隠れた本質的な価値を見出す。そしてそれを革新的なアイデアと結びつけることで、社会全体に新しい可能性を示します。「福祉」には、障がい者、子ども、高齢者といった特定の対象だけでなく、地域に生きるすべての人々の暮らしが含まれています。私たちは、当たり前だと思われていた社会の枠組みを超え、未来へと続く持続可能な価値を創造します。

社会の価値を引き出す活動

4)社会の「ハブ」となる活動

行政・企業・市民をネットワークし、出会いと協働を加速させます

私たちは、社会に点在する様々な要素を、有機的に結びつける役割を担います。孤立しがちな「点」と「点」をつなぎ、全体としての「面」を豊かにすることを目指し、地域住民、企業、行政、そして様々なNPOといった多様な主体を巻き込みます。それぞれの強みを掛け合わせることで、一人では成し得ない大きな社会貢献へと発展させていくこと。都市と農村、異なる価値観を持つ人々を繋ぐことで、新しい共生社会のモデルを創造し、社会全体に活力をもたらすこと。それこそが私たちの「ハブ」としての役割です。

社会の「ハブ」となる活動
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奥こんぜ農泊推進プロジェクト

 滋賀県栗東市山間部の奥金勝(こんぜ)地域は、過疎化により空き家や耕作放棄地が増加していました。この現状に対し、私たちは都市住民との交流を通じて地域を活性化させる「奥こんぜ農泊プロジェクト」をスタートさせました。

このプロジェクトは、単なる観光コンテンツ作りではありません。プロジェクトを通して目指したのは、住民が自分たちの地域の豊かな自然や人としての温かさに気づき、誇りを取り戻すことでした。過疎化は地域に魅力がないから起こるのではなく、少子高齢化など社会全体の影響です。だからこそ、住民自身が地域の本来の魅力を再認識することが重要だと考えました。

そこで、農泊を推進する協議会を立ち上げ、住民との協働で地域の魅力の再発見と掘り起こしを進めました。その結果、住民の方々が地域に新たな可能性を見出すきっかけを作ることができました。HUB'sは、このプロジェクトのコンセプト作りから協議会の設立、補助金活用までを総合的にプロデュースし、地域の活性化に貢献しました。

奥こんぜ農泊コンテンツ紹介

よりみち畑プロジェクト

滋賀県栗東市は、都市化による農地の減少が進む中で、春のトラクターの音、夏のカエルの大合唱、秋の稲刈り後の土の香りといった、五感で感じる「農のある暮らし」が失われるという課題を抱えていました。 

この問題を解決するため、私たちはNPO法人縁活と共に「よりみち畑」プロジェクトを立ち上げました。かつて子どもたちが通学路のあぜ道に「よりみち」して自然に親しんでいた日常をコンセプトに、市街地に残された農地を貸し農園として整備。今では、近くの保育園の子どもたちが散歩で訪れ、小学生は登下校の合間に、五感で農を感じる体験や交流の場となっています。 

この取り組みは、子どもたちの食育や新しいコミュニティづくりに貢献しています。HUB'sは、このプロジェクトのコンセプト作りから参画し、プロジェクトに取り組む協議会の設立や補助金活用をプロデュースすることで、失われた農のある暮らしを地域に再構築しました。 

甲賀流農福連携プロジェクト

滋賀県甲賀市では、農業に関心がある一方で、福祉施設での農福連携は進んでいないという課題がありました。この状況を変えるため、私たちは「甲賀流農福連携」の構想を立ち上げ、その持続的な推進に向けた協議会を設立し、先進地への視察や農家と福祉施設の交流会など運営をサポートしました。

この協議会での議論を通して、「農作業=しんどい」という福祉施設職員の先入観が大きな障壁となっていることが見えてきました。そこで私たちは、就労目的だけでなく、職員と利用者が一緒に参加する芋掘り体験などを通じて、農福連携に興味を持つ人を増やすことを目指しました。協議会は、単に仕事のマッチングをするだけでなく、地域特有の潜在的な課題を深く掘り下げ、実情に合った解決策を見出す上で不可欠な存在です。

HUB'sは、実態把握から協議会の設立、補助金活用までを総合的にプロデュースしました。この取り組みを通じて、甲賀市における農福連携の発展に貢献しています。

「あるきだす」地域再生プロジェクト

滋賀県栗東市金勝地域は、世帯数の減少と空き家増加が進む限界集落です。この地域で私たちは、空き家だった築100年を超える「旧山下邸」を活動拠点とする、地域再生プロジェクトを立ち上げました。

プロジェクトの目的は、障がいのある人たちが地域に繰り出し、手伝いや「おせっかい」を通じて住民に受け入れられる、福祉の新しいあり方を実現することです。また、拠点となる古民家は、施設として特別な意味を持たせるのではなく、あくまで活動の場として地域に自然に溶け込むことを目指しました。

このコンセプトは高い評価を受け、日本財団の「第一回みらいの福祉施設建築プロジェクト」助成金に採択されました。改修された古民家は「あるきだす」と名付けられ、これから100年の新しい歴史を刻み始めています。

HUB'sは、このプロジェクト全体のプロデュースを担当し、その成果として2023年のグッドデザイン賞を受賞しました。私たちのこの取り組みは、新しいコミュニティを創造し、地域を再生することに貢献しています。  

2023グッドデザイン賞「農業と福祉の拠点 あるきだす」

栗東529(こんにゃく)プロジェクト

滋賀県栗東市は、人口増加による宅地化と農地の減少が進む一方で、中山間地では過疎化に伴う耕作放棄地の拡大という二つの課題に直面していました。私たちは、この問題に取り組むため、NPO法人縁活「おもや」とともに、中山間地にある耕作放棄地を活用した新しい農業に挑戦しました。 

しかし、その土地は獣害が多く、拠点からの距離もあって栽培管理が難しいという課題がありました。そこで、イノシシやシカが食べず、比較的栽培が容易なこんにゃく芋に着目。栽培から加工までを手がける六次産業化の事業として、「栗東529(こんにゃく)プロジェクト」をスタートさせました。 

このプロジェクトは、耕作放棄地の有効活用や新たな加工食品の創出だけでなく、障がい者の新しい就労機会も生み出しました。HUB'sは、このプロジェクト全体のプロデュースを担当し、都市と農村の課題をつなぐことで、地域の活性化に貢献しました。

栗東529プロジェクト公式サイト 

ハコ畑プロジェクト

東京都心部では都市化が進み、便利な暮らしと引き換えに自然や農業とのつながりが失われました。高層マンションが立ち並ぶ江東区豊洲も例外ではありません。若い世代が多く暮らすこの地域では、子どもたちが五感を使って自然を感じ、食べ物が育つ過程を体験する機会が不足しているのが現状です。 

この課題を解決するため、私たちは豊洲公園内の空き地を活用し、木枠のレイズドベッド「ハコ畑」を設置しました。この場所では、子どもたちが参加できる栽培体験を通じて、都会での農のある暮らしを日常の一部にすることを目指しています。自ら食べ物を育てる喜びを知ることで、子どもたちの食への意識と生きる力が育まれます。HUB'sは、このプロジェクトのコンセプト策定から協議会の設立、補助金の活用までを総合的にプロデュースし、都市空間に新たなコミュニティを築くことに貢献しました。 

社会の「ハブ」となる活動

この活動は、地域に点在し、それぞれが独立してしまいがちな「点」と「点」を結びつけ、「面」として社会全体を豊かにすることを役割としています。行政、企業、市民、そして様々な団体といった多様な主体を巻き込み、それぞれの強みを掛け合わせたり、弱い部分を補いながら協働することで、個々の力だけでは成し得ない大きな社会貢献へと発展させています。人々や組織の間に繋がりを生み出し、新しい価値や活力を創造していくこと。それこそが、私たちが最も得意とし、大切にしたい取り組みです。

【これまで私たちが取り組んだこと】

・自治体を含む多業種連携や地域協議会のサポート

・研修講師・アドバイザー派遣を通じた地域課題解決

・人が集う交流会や研修会のコーディネート

社会の価値を引き出す活動

この活動は、一見すると見過ごされがちな社会の課題に光を当て、それを新しい価値へと転換する挑戦です。障がいのある方の高齢化や都市と農山村の二極化など、複雑に絡み合った課題に対し、地域に眠る資源や人々の営みに新たな価値を与えることで、持続可能な未来に向けた新しいモデルを創造しています。これらは、社会の枠組みを超え、人と人、人と地域の繋がりを生み出す取り組みです。

【これまで私たちが取り組んだこと】

・古民家を改修した地域交流拠点の創出

・地域資源を活かした地域包括ケアシステムの構築

・小学生が環境や共生社会について学ぶ機会の創出

地域と未来をはぐくむ活動

この活動は、地域で暮らす人たちが気軽に農に触れる機会を創出するなど、農を通じて誰もが安心して暮らせる温かい地域社会を再構築することを目指しています。また、地域が直面する課題を解決すべく、都市と農山村の交流を促進するなど、人々の活動が停滞していた地域に、新たな価値と活力を生みだす取り組みです。

【これまで私たちが取り組んだこと】

・都市の未利用地を活用した市民農園の開設

・過疎化が進む中山間地域における農泊事業

・農を通じた世代間交流を促すマルシェやイベントの開催 

はたらく幸せを創る活動

この活動は、働くことを通して、生きがいや自己肯定感を見出すことを目指しています。従来の枠にとらわれない新しい発想から多分野との連携を通じて、誰もが役割を実感できる機会や、新しい仕事の形を生み出しています。地域を支える担い手をたくさん生み出し、その人たちの大きな自信と誇りにつなげる取り組みです。

【これまで私たちが取り組んだこと】

・遊休農地を活用した六次産業の創出

・農業と伝統文化(陶芸など)による新しいコラボレーション

・地域資源を活かした商品開発